はじめに、「ストレス」というどこか得体の知れない物に対して、私たちは今まで重大な思い違いをしていました。それは、ストレスに勝とうとしていたということです。しかし、私たちはストレスに勝とうと思ってはいけません。なぜなら、人はストレスには勝てないようにできているからです。
そしてもう1つ、最近「ストレスフリー」という言葉をよく聞きますが、これも目指してはいけません。なぜなら、ストレスは決してなくならないからです。決して得られない物を望んでしまうと、かえってストレスは増えてしまいます。仏教をひらいたお釈迦さまは、6年という歳月をかけて、あらゆる苦行を経験し、ストレスに打ち勝とうとしました。しかし、それでもストレスに勝つことはできなかったのです。では、私たちは日々迫りくるストレスに対して、どうすればいいのでしょうか、その答えは、実は非常にシンプルなものでした。
ストレスを消せばいいのです。確かにストレス自体は決してなくならないし、ストレスに勝つことはできません。ストレスが大きくなれば、人間の生命をも脅かすとても危険な存在になります。
しかし、ストレス自体はなくせずとも、ストレスによって受ける「苦しみ」はいくらでも消せるのです。本当の意味で「ストレスに強い人」というのは、ストレスを打ち負かしていく人ではありません。襲い来るストレスを上手に受け流し、自分にとって適度なストレスにコントロールできる人のことなのです。
重要なのは、その方法を知っているかどうか、それだけです。
心のストレスの正体は、「脳が神経伝達物質を通じて感じるストレス」です。
心のストレスのことを「脳ストレス」と呼んでいます。そして私たち人間の脳には、脳ストレスをコントロールするための機能がちゃんと備わっているのです。その機能は、本来ならば人間が社会生活を送る中で、人とのコミュニケーションを大切にしながら規則正しい生活を送っていれば、自然と働くようになっていました。ところが近年、不規則な生活や、核家族化、パソコンや携帯電話の普及などによって、社会生活そのものが大きく変化してしまいました。そのため、この大切な機能がうまく働かない人が増えています。
脳ストレスをコントロールするための機能は2つあります。1つは、ストレスを受け流す体質をつくる機能です。これは「セロトニン神経」を活性化させることで高まります。もう1つは、溜まってしまったストレスを一気に解消する機能です。これは、「涙」を流すことでスイッチがはいります。
この2つの機能が備わっているのは、最も人間らしい脳といわれる前頭前野の内側部です。この場所は、別名「共感脳」といわれ、社会性や他者への共感を育む場所でもあります。ストレスをコントロールする機能は、そうした最も人間らしい脳に備わっているのです。
人間はひとりでは生きていけない、社会的な生き物です。
人生の質を決定づける「3つの脳」
<前頭前野の3つの脳> 学習脳・仕事脳・共感脳
私たち人間の心は、実はこうした脳の働きの現れなのです。
人の心は一定ではありません。普段はとても思いやりのある人でも、ときにはイライラしたり、ひどく激昂したりと、そのときどきで変化します。
こうした感情の変化は、脳の働き具合によって生じる変化なのです。3つの脳には、それぞれに特徴があり私たち人間の心模様は、そのどの部分が強く働いているかによってコロコロと変化していると言う訳です。
「学習脳」・・・快感を操る「ドーパミン神経」(報酬を前提にして、いろいろな努力をする) 報酬が得られなかったとき(不快)⇒ストレス⇒依存症 exp,「アルコール依存症など」
「仕事脳」・・・危機管理センター「ノルアドレナリン神経」(一瞬にしていろいろな情報を分析し、 経験と照らし合わせることによって、最善の行動を選択する)
ノルアドレナリンもドーパミンと同じく興奮物質ですか、ノルアドレナリンは言わば生命の危機や不快な状態と戦うための 脳内物質なのでドーパミンの「快」とは逆に、「怒り」や「危険に対する興奮」をもたらします。
脳全体を「ホットな覚醒」に導く(適度な興奮状態の時)
ノルアドレナリンによる脳の異常興奮は、うつ病をはじめ不安 神経症・パニック障害・強迫神経症・対人恐怖症などさまざま 神経疾患をもたらす。
「共感脳」・・・脳の指揮者「セロトニン神経」
「クールな覚醒」をもたらす。
<夢を恐れる若者たち>
夢や希望をどのように持つか、実はそれだけで、その後の人生が大きく変わってしまう。そもそも、夢や希望は、脳にとっては「快」であり「報酬」です。人間の脳は、本来「快」を求めるようにできています。
それが、その「快」すら求めなく成るというのは、何かプレッシャーやブレーキがかかっているという事です。
たとえば、未来に大きな夢を持たず、自分はフリーターでいいという若者は、自分が社会に出て得られであろう「快」という報酬よりも、その過程で被る「不快」を恐れる気持ちの方が大きくなっているといえます。
「不快」を恐れるようなってしまった原因。
@ 誰もが認めるような「明確な報酬」がなくなっている。
A 最初の社会となる学校で、いじめや挫折などトラウマ(心的外傷)になるようなことを経験した。
B 子供の頃の育ち方が原因で、きちんと前頭前野が発達していない。
まずは夢を持てなくなっている人に夢を持っていただきたいと思います。
「快(=夢)」を求めるという自然な心に、なぜブレーキがかかっているのか、その原因を突き止めて、それを外していくことが先決である。
今、多くの人が頑張れなくなっているのは、最もわかりやすい報酬が
「お金」になってしまったからだと思います。
お釈迦さまのたどり着いた「慈悲」の意味とは、我が身を使ってストレスをとことん研究したお釈迦さまは最終的に、人間はストレスには勝てないことを悟りました。
だからこそ、座禅を組んでセロトニン神経を活性化させながら、ストレスが消えるのを待つことを説いたのです。
お釈迦さまはもう1つ「慈悲」ということを説いています。「慈悲」という言葉は、サンスクリット語も「マイトリ―(maitrii)=慈」と「カルナ(karunaa)=悲」という2つの言葉によって構成されています。お釈迦さまは「慈悲」という言葉で、「共感脳」を活性化させることで、もたらされる癒しがあることも説いておられたのです。他人のために何かをするということは、実は自分を最も幸せにする方法だったのです。昔から「情けは人のためならず」といいますが、それは単に教訓的な意味ではなく、本当に私たちの脳がそういう仕組みになっていたのです。
・・・・興味のある方は、著書をチェックして見て下さい・・・・ 松 本
|